学院長 星祐子
本学院ホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。このたび、笹野信治前学院長の後任として、今年度4月に就任いたしました星祐子と申します。私は、筑波大学附属視覚特別支援学校で教員、副校長、校長として勤務した他、国立特別支援教育総合研究所で研究や業務に当たり、昨年度は、本学院の非常勤講師として教育活動に関わらせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
本学院は、日本の開港の歴史情緒あふれる横浜山手から連なる丘の上に建つ日本で唯一の私立の盲学校です。1889年(明治22年)に、創始者であるシャーロット・ピンクニー・トレーバー女史が盲人福音会を設立し、困難な生活を強いられていた成人視覚障がい者の保護と教育を行ったことから始まりました。それ以降、日本の近代における視覚障がい教育の草創期とともに歴史を積み重ね、建学の精神であるキリスト教の愛に基づいた私立盲学校として、独自の教育実践を重ね、歩んできました。1924年(大正13年)には、早期教育の重要性から全国に先駆けての幼稚部(初等科予科)設置、1968年(昭和43年)には、全ての障がいのある子どもたちの就学を制度化した養護学校義務制の10年以上前に、普通部において視覚重複障がいの子どもの教育に着手するなど、常に時代のニーズと先見性をもって、歩んできたことが本校の歴史からうかがうことができます。
普通部では、3歳から21歳までの視覚障がいと他の障がいを併せ有する重複障がいの幼児児童生徒が在籍し、個々に応じて、コミュニケーションの力を伸ばし、社会的・家庭的な自立をめざした教育に取り組んでいます。1972年(昭和47年)より、無学年制、ティームティーチングの体制を取り入れた独自のグループ編制をしています。2007年(平成19年)には、盲学校として初めて高等部専攻科生活科を設置し、重複障がい児(者)の生涯学習の基盤となる教育を高等部普通科終了後、さらに3年間の教育を受けられるようになりました。この専攻科生活科を見据えて、幼稚部から一貫した教育を系統的・継続的に積み重ねていけるよう全職員が連携し、一丸となって取り組んでいます。
理療科では、視覚障がいを有する成人の方を対象に、日本の盲学校の伝統的な職業教育の一つである「あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師」の国家資格となる免許状の取得をめざす教育を行っています。理療従事者としての専門性を高め、社会的貢献を果たしていけるよう、少人数制で、個々の見え方やニーズに応じた分かりやすい授業を心がけ、生徒に寄り添う教育に取り組んでいます。
本学院の教育の精神は、教員と幼児児童生徒が日々のかかわり合いの中から互いに学び合い、互いの成長を喜び合える家族のようなかかわり合いをしていくことです。そのために、幼児児童生徒の実態と課題を的確に把握し、今どのような教育内容や教育方法が必要なのかを見極めて保護者との理解を図りながら、幼児児童生徒の健やかな成長を願って、指導していきたいと思っています。 そして、授業づくりと教材研究や開発、学ぶための環境整備をして、幼児児童生徒が主体的に喜びをもって成長していけるよう、日々の学校生活の中で教育実践を積み重ねて、日本の視覚障がい教育の一端を担っていきたいと思います。 保護者の皆様、そして関係機関や地域の皆様を始めとして幼児児童生徒たちを見守り、支えてくださっている多くの皆様、紙面をお借りしてのご挨拶になりますが、今後とも温かいご支援とご協力をお願い申し上げます。